美味しい和牛と妊娠鑑定 出産準備 カイト危機一髪 

 辛く申告な日々から解放され(大げさ!)、晴れやかな気分で牛舎に行く。今日は、マユコの排卵確認と、モモカ・シゲヨの妊娠鑑定だ。
 マユコは排卵しており、改めてもう一本の種を使うこと無くすんで良かった。
 モモカとシゲヨは妊娠しており、これで妊娠牛が21頭になった。
 
 確認中、黒毛和牛の美味しさについて語ったら、
「よだれが出てきて、集中できません。」
と抗議を受けた。黒毛和牛は美味しいが、脂がきつく感じると言う意見も伺った。高ランク牛は、脂肪交雑が高いので、フライパンなどで焼き肉にすると、脂まみれになる。食べ慣れないと、この脂はきつく感じる。
「すき焼きすると、さっぱり食べられていいんですよ!」
と例の脂肪酸の話しをした。いずれにしても、煮すぎ焼きすぎは禁物だ。なんの肉だか判らなくなる。
 
 俺が生まれて初めて黒毛和牛を食べたのは、認定農業者になり、市場に繁殖雌牛を買いに行った時だ。BSEが発生した年だったが、俺が買った雌牛は50万円もした。良い牛は安くならなかったのだ。
 その前の晩、最高ランクの黒毛和牛の炭火焼き肉を食べさせてもらったのだが、その旨さに感動し『この味を知った人は、絶対に離れられない。』と確信した俺は、無理してどんどん増頭して行った。
 現在、生産が消費に追いついていない状態だ。
 
 寒さが和らぎ、フクの産道が下がってきた。子牛を入れる部屋の準備をした。分娩室が開いていないので、生まれ落ちたら初乳を飲ませて暖かい部屋に入れ、代用乳と母乳の併用を考えている。子牛の部屋は、塩素消毒して乾かしておく。
 
 林間放牧で、林床を綺麗にしようともくろんでいる俺は、その下見に行った。ため池には氷が張っていたが、その上をカイトが歩いていた。
「危ないぞ!」
と言っている間に、氷が割れて、落ちてしまった。氷に登ろうとするが、滑って登れない。泳ごうとするが、氷に阻まれて進めない。氷を割るための長い棒を探すが、池周辺の棒は、ゴロウが綺麗に片付けてしまって見つからない。時間が無いので、氷の薄い方に誘導し、なんとか無事に脱出させることが出来た。写真に撮りたかったが、必死なカイトを見ると、そんな余裕はなかった。
 俺は、氷の浮かぶ湖で、400m位スッポンポンで泳いだことがあるので(単なる馬鹿)、いざとなったら助けに入る自信はあったが、そんなことにならなくて済んで良かった。