子牛の運動場 診療所に行った 

朝は相変わらずからだが重い。
「昨日より、顔が明るくなったよ。」
確かに、気分の方は、それほど落ち込んでいない。朝牛舎をやっているうちに、ちょっと元気になり、子牛の運動所を作った。単管などで物理柵を作った方が良いのだが、電気牧柵2段張りで挑戦。ポールが足りないので、水道管を使い、そのために碍子をちょっと改造。
 まず、桃三郎とスズコを出す。電気牧柵のケーブルに引っかかって、ビックしして部屋に戻ってきた。数回繰り返した後、あまり引っかからなくなった。
 隣のアカリとミノリを出してみた。出入り口を塞いでいた板を外す間、アカリは俺の髪の毛をずっと舐めたり引っぱったりしていた。出た途端、アカリは二つの運動場を隔てた2本のケーブルを物ともせず、桃三郎の方に引っ越ししてきた。頭にきつつ、なんとか追い返し、4段ケーブルにして、スイッチを入れに行っている間にまた破られてしまった。
「バカヤロー!」
叫んでも、どうにもならない。急いで補修して、ダッシュで電源を入れた。しばらく様子を見たが、大丈夫そうだ。
 
 堆肥の切り返しをした。化学肥料が買えないので、大事に使わなければならない。
 
 診療所に行き、月刊クオリティを読んだ。村上医師の記事が、5ページに渡って書かれていた。
 どこの地域でも、医師不足に悩まされている。その中で、医療機関・行政・住民も参加した、保険・医療・福祉・教育(健康教育)が連携をとった町づくりをしていた旧瀬棚町では、医師もコメディカルスタッフも集まってきて、とてもやり甲斐を持って働けた。 
 このやり甲斐の源は、「住民が良い地域医療を望むこと」だそうだ。自分の健康に関心を持ち、医師任せにしないことだ。
 
 数ヶ月前まで稼働し、全国のいろいろな自治体、議員などから視察を受け、瀬棚方式と名付けられて動向が注目されていた医療体制は、高橋町長との対立により崩されてしまった。
 医療対策審議会に町の医療の将来を委託されたが、審議委員の方に医療の専門家はいない。
 
 現在、各地でせたなと似たような、公立病院の医療崩壊が起きている。
 どうしてなのか?なんのつながりもない、それぞれの場所で次々起こる医療崩壊には、共通点がある。
 うまく機能していた医療機関と、行政機関との連携の悪化だ。特に目立つのは、医療を受ける住民側の視点とはかけ離れた行政機関や首長(町長、市長)が、強権を発動して、住民にも喜ばれていた努力する医療現場を、土足で踏みにじる行為をしている点だ。
 
 医師の研修制度が変わり、大学の医局に残る医師の数が凄く減った。
 大学の医局では、研究の中心人物に気を使って、若いお医者さんが本当に取り組みたい研修ができなかったり、気に入られないと、左遷人事として行きたくもない医療機関に飛ばされることなどがあったそうだ。
 新しい研修制度では、かなり自由に研修先を選べるようになったらしく、研修医を受け入れている診療所や、民間病院などの現場に、情熱をもち学びたいことがある熱心な研修医が集まった。その結果、大学医局は医師数を確保できなくなったようだ。
 大学医局頼みで、地方の自治体が医師派遣を受けることは、とても難しくなった。
  
 旧態依然とした医局頼みのやり方では、どうにも医師が集まらない。特に、情熱のある医師ほど集まらないのである。

 せたな町は、今、医師確保という点で、危機にひんしている。
 しかし、これは、乗り越え方によっては、千載一遇の大きなチャンスでもあるのだ。
 医療対策審議会に、専門的な知識を持った人を呼び、我が町の将来に暗雲を残さない医療体制を作れるようにしなければならない。
 幸い、「公立病院の経営問題」に取り組んでいる日本で唯一の研究者伊関友伸先生が、せたな町にくるらしい。この機会に、医療対策審議会や、町民の前で講演をお願いできないものだろうか?
 ひとり、ジタバタしているうつ病患者であった。
 
 夜牛舎は、とても気持ちよく働けた。体が軽い!糞出しを念入りにやり、お産の近いモモエを、監視カメラの下につないだ。

せたな町の僻地医療を考える掲示板