休養日 薬剤師の話

 カイトが帰ってきて、久しぶりに安心して眠ることができた。朝、久しぶりに俺が娘にミルクをやった後、また寝入ってしまった。
  
 どうせ雨が降っているので、遅い時間にゆっくり犬達をトラックの荷台に乗せて牛舎に行った。カイトは、置いていかれないように(?)荷台からなかなか降りなかった。降ろしても、俺が何か動くとすぐに飛び乗っていた。やはり自発的に降りて、置いていかれたのがショックだったようだ。いつも、俺様カイトと姫たちに言われていたのだが、ゴロウの優しさを少しは感じたようだった。
 雨が止んだ隙に、家庭菜園に野菜の種を撒き、家に帰ってまた寝た。
 
 3時頃にようやく起き出し、昼飯を食べた。明日から、また牧草収穫が始まるので、「たまには休ませろ!」ってところだ。
 
 
 吉岡医師が残留を表明した新聞記事を、今頃読んでいるのだが、薬剤師や放射線技師の常勤など、スタッフ確保の問題が書かれている。失礼な俺は
「町長に、村上医師と話をしてくれるように言ってもらえませんか?」
と言ったのだが、
「・・・言っても無駄だから・・・。」
問題の根っ子は深そうだ。
 町長に会った会の代表の会話録を見ると、結構面白いのだが、後日にしよう。
 
 日本の法的には薬剤師を置く必要のない診療所で、どうして薬剤師を要求するのだろう?
 欧米では、薬剤師の地位が高く、医師から患者を守る働きをするという
 妻が、咳が止まらないで苦しんでいたとき、ある病院を人から紹介されて受診したことがある。
「気管支拡張剤に過敏症だから、使わないでください。」
と医師に申告した。2週間分4種類出された薬をのんだら、その夜発作が起きて大変な目にあったことがある。
 翌日その病院に行って、薬剤師に調べてもらったら、2種類の薬に、気管支拡張剤が入っていることがわかった。かなり高価な薬だったのに、全部廃棄するように言われ、新たに別な薬を買わされた。
 患者と直接話し、医師に対等にものが言える薬剤師であったなら、こんなことは起こらなかったのだと思う。
 瀬棚診療所の薬剤師さんは、患者と直接話し、医師に対等にものが言える、日本においては先進的な薬剤師さんだった。
 博士号を持っていたその薬剤師さんは、診療所を辞職された後、薬科大学で助教をしているという。そんな人を、惜しげもなく放出するせたな町って、太っ腹だ。