カイトの生還 ラップサイレージ

 今日は、早起きして朝牛舎をすませ、大沼の農機具中古市にロータリーレーキと、安物のプラウを買いに行く予定だった。しかし、事前に調べたところ、出品点数が少なく、気分も優れないので断念した。行く途中で、八雲付近をうろついているという犬の群を探すつもりだった。
 
 普通に朝牛舎をして、天気が悪い中、ゴロウと二人で探しに行こうかと迷っていたところ、共済の獣医さんから電話があった。以前瀬棚で働いていた美しい女性の獣医さんが、八雲の酪農家の家でカイトを見かけたという連絡だった。
 大急ぎで準備し、手みやげを買って出発!道中の長いこと・・・。この道を、何往復探したことだろう。
 鮭鱒孵化場近くの酪農家さんの家の敷地に入ったら、ゴロウがしきりに鼻を鳴らした。とても優しそうな長身のご主人に示されるまま牛舎に行くと、居た!カイトが、ヒンヒン鼻を鳴らしながら駆け寄ってきた。ほっぺたに傷があるが、元気そうだ。
 このへんは、止まったり、急激な進路変更をしていないので、たぶん八雲の橋で止まったときに飛び降りて、十数㎞戻ってきて疲れたところで、ここのご主人に優しい声をかけられ、ここの犬達の群に合流してしまったようだ。
 ケンカもしていたそうで、顔の傷はその時のものらしい。嬉しそうにじゃれかかるゴロウに、うなり声を上げていたところを見ると、けっこう負けん気強く頑張っていたようだ。
 
 八雲で買い物をして帰る。本当は、去勢をした方がいいと思ったのだが、受付時間が遅かったので、一旦帰ることにした。カイトは、思いのほか疲れていたようで、今日去勢したらショックが大きすぎたかも知れない。
 
 Mikiの入院中、娘をボランティアで預かってくれた母さん方に、八代特産のゴザを持ってお礼して回った。俺の叔父が、お礼にさし上げるようにと、倉庫に眠っていたゴザ編み機を使って作ってくれたセンターラグだ。みんな、カイトの生還を喜んでくれた。
 
 昨日から、サイレージラップを開けて、大型扇風機で風を当てながら使っている。サイレージはとても臭いものだというイメージがあったのだが、乾草になり損ないをラップしたので、なんともいえないいい匂いがする。完全に発酵が済んでいないので、時間が経つとカビが生える可能性があるそうだ。風を送っているのは、乾燥させてカビるのを防ぐためだ。ゴロウもカイトも、この匂いが気に入ったようで、完全に乾燥した牧草の上ではなく、サイレージの上で寝ていた。子牛もよく食べる!
 
 久しぶりに家に帰ったカイトは、疲労困憊しており、小さな体にとって大冒険だったようだ。室内に入れて良く見ると、全身小さな傷だらけだ。いつもゴロウに接するように他の犬に接したら、きっとケンカになるので、随分こっぴどくやられたようだ。
 ゴロウが、傷口や全身を舐めてやっているのが、微笑ましかった。
 心配してくださった方、どうもすいませんでした。