ナミコ種付け 女装 馬に蹴られた

yonemiki2006-06-04

 明け方の授乳にも起きれなかったので、朝の授乳は俺がやった。
 そのまま起きて、朝牛舎に行く。今日は種付けがあるので、ちょっと早めに行かなければならない。午前中の遅い時間と頼んだのに、ちょっと早めに来てくれた。ナミコの発情はバッチリだったので、「福栄」を着けた。
 放してある馬について、
除草しているんです。」
と説明したら
「エッ女装しているんですか?」
と腰をくねらせて笑わせてくれた。昨日、種付けに行って、牛に激しく蹴られてしまったらしい。
「お大事に!」
と言って見送った。
 
 今朝は時間があったので、糞出しに精を出した。積み過ぎて、農協で買った丈夫な一輪車のフレームが、グニャグニャしている感じがするナーと思いつつ、強引に押していたら、柱に接触した拍子にフレームを曲げてしまった。俺は足が悪く、あまり何回も歩きたくないので、つい過積載になってしまうのだ。とりあえず応急処置して、全部搬出した。
 
 仕事が溜まっているので、つい楽をしようとするのは普通のことだろう?
 ホルターブレーキングとは、安全に引き馬するための最初の調教だ。
 仔馬のビクターは、俺のことを信用しているので、なんの抵抗もなくホルター(モクシ)を着けさせてくれる。ここまではいいが、ホルターに着けた引き綱で引かれたときに、すんなり人についてくる様にしないとあまり意味がない。
 プレッシャーとリリース(プレッシャーからの解放)で、人との上下関係を学ばせたり、ホルター(モクシ)につながれても、イヤなことは起こらないこと、引き綱を引かれたら引かれた方へ抵抗無く動くことなどを体験させる。その後の調教を大きく左右する大切なしつけなのだ。
 
 ビクターほど大きくなった仔馬のホルターブレーキングは、ある程度の広さがないと危険なので、普通は丸馬場で行う。ところが、たまたま馬房内にビクターが入っていたので、つい出来心でホルターブレーキングを始めてしまった。
 ビクターは、俺がかけるプレッシャーの意味がわからず、遊んでいるのと勘違いしていた。仕方なくプレッシャーを強めていったら、突然全身のバネを使った激しい蹴りを腹に食らった。
 空手をやっていたので、腹筋にはそれなりに自信があるのだが、体重300kgを越える馬の蹴りは、来ると判って瞬間的に体を硬直させて衝撃に耐える体制をとった俺の体を吹っ飛ばし、機能を一時的に麻痺させるのに十分な衝撃だった。
 始めたら、絶対に成功させなければならないのが、ホルターブレーキングだ。気を取り直して、さらにプレッシャーをかけたら、今度は胸と右肘に喰らってしまった。(顔を守るためだ)
 空手3段の親父からいつも殴られていたし(あまり意味もなく)、空手の練習中もかなり蹴られたりしていたのだが、これほどの強い蹴りは初めて食らった。脚力だけで蹴る牛とは大違いだ(それでも痛いが)。
 ホルターブレーキングをするには狭すぎて、しかも準備が安易すぎた。ロープではなく追いムチを用意するべきだったが、これから牛舎にとりに行くわけにもいかない。仕方なく、その辺の棒を拾ってきて、馬との距離をとりながらさらに調教を続けた。
 頭の良いビクターは、オケツではなく顔を人間に向ければ、プレッシャーをかけられないことをすぐに理解した。しかし、左回りができない。俺の体力的限界(痛みをこらえる)も近づいていたので、ホルターをかけて右回り、左回り、どちらでもできるようにして、よく誉めて家に帰る。
 家に帰って見たら、わきばらに蹄のあとがくっきり丸く付いていた。右肘は腫れあがり、曲がらないので飯も左手で食うほどだった。あばら骨がちょっと心配だ。先日もらった強力な痛み止めを飲んだ。
 
 夜牛舎をやらなければならないので、必死の思いで出かけた。なんとかエサと水、牧草を与えて、ようやく終わらせる。朝のうちに糞出しをしておいて本当に良かった。死にそうな思いをしてようやく終えた。
 
 牛舎を終わらせ、除草係の馬たちを柵にもどしてやった。
 ビクターは、ホルターを着けて引っぱると、回転することはできるが、狭い馬房の中では、真っ直ぐ引っぱるところまではやれなかった。引っぱると、4本足をふんばり、さらに引くと後ろ足で立ち上がって抵抗する。しかし、引き綱を振りほどいて逃げていくようなことはなかった。
 乗りかけた船というヤツで、回転させる度に頭を撫でて誉めてやり、回転の動きを徐々に真っ直ぐの動きに変えながら、一歩進めば誉めて根気よく覚えさせた。
 なんとか柵の中まで引いてくることができた。

 馬房で突然ブレーキングされて、相当なプレッシャーを感じたと思う。蹴っても俺に効かなかったことが(壁に吹っ飛ばされながらも立っていた。でも本当は、うずくまって転げ回りたかった。)、ものすごい驚異だったようだ。それでもすぐに捕まるところなどは、人に対して必要以上に恐れを感じない、頭の良い人なつこい馬ってことだ。
 俺が手抜きをしないで、初めから追いムチを使って調教していれば、こんなアホな痛いことにはならなかったと思うのだが、後の祭りというヤツだ。
 
 娘は、40年ほど前にmikiの同級生が使っていたよだれかけを、愛用させてもらっている。mikiの同級生のお母さんの手作りなのだ。ビクトリアンカラーとかいう英国女王の襟巻きみたいに見える。