悪夢の目覚め2 区長の仕事

脱走牛

 窓の外は雪景色だった。冬に逆戻りしたみたいだな〜と外を眺めたら、牛舎の前に黒い影が・・・。
「げげっ!脱走だ!」
妊娠牛の群13頭が、腹を空かせて脱走したのだ。急いで牛舎に行き、バケツに配合飼料を入れ、
「お〜ぃ!来い来い!」
と言いながら誘うと、リーダー格のフクやモトツボが先頭に立って俺についてきて、全員無事に柵の中に入れることが出来た。雪の上にエサを置いてやり、脱走経路を確認したら、腹が減って山に登ったらしい。ところが、まだ牧草が生えていなかったので、雪に埋まった柵を越えて、除雪した道沿いに牛舎に戻ったのだ。すぐに、ボロイ2番草(ダイエットのため)を入れてやった。
 牛舎内に侵入した牛は、たぶん1頭だけで、ほとんどが入り口のブルーシートが怖くて入れなかったようだ。念のために、隣(数百メートル離れている)に遊びに行って、被害を受けていないか確かめた。大丈夫だった!
 さて、朝牛舎だ。いつものようにエサを体重計で測るが・・・?また踏みつぶされていた。いつもは、脇にしまってあったのに!仕方なく、目分量でやった。


 ところで、本来置かないはずだった区長の仕事ってなんだろう?他の役職と兼任のはずだったが・・・。
 「せたなの医療を考える会」が、地区懇談会を開いて欲しいと、瀬棚区長にお願いしたら
「議会の承認がないと無理だ。」
と言ってなかなか受け付けてくれなかったそうだ。調べたら、区長の権限だけで開けるものだった。嘘をついていたのだ!
 公職に就く人が平気で嘘をつき、前言撤回するのをしばしば目にする。(村上医師が辞める理由についても、町長の発言は二転三転した)


「では区長の仕事ってなんですか?」
と聞かれたとき
「大した仕事はない!」
と区長自ら言った話は有名である。

 3町合併したとき、瀬棚区の行政の専門家として、それまで取り組んできた旧瀬棚町の取り組み(例えば予防医療や医療政策の成果)を町長に伝えたり、瀬棚区民の声を届ける為に、財政難の中、年収約1千万円という高給で特別に雇われたはずだ。
 皆さんの年収と比べてみてどうですか?身を粉にして働かなければならない高給だと思う(我々の税金で払っているのですよ)。
それが、本来の仕事である、村上医師と町長の橋渡しの仕事を怠り、
「大した仕事はない!」
と言いきれること自体が問題である。仕事をしないのなら、給与を返還して辞めるべきである。
 町長派の人たちも、村上医師と町長の亀裂が深刻になったとき、
「町長ばかり攻めても可哀想だ!区長が悪いんだ!村上医師と町長の間を取り持って、話し合いが出来る状態を作らなかったから・・・!」
もっともな話だと思う。区長が、旧瀬棚町が、診療所を中心とし、役場がバックアップして実践してきた先進的地域医療の取り組みについて、真剣に説明責任を果たしていれば、こんな最悪の事態を避けられたと思う。
ここで、個人攻撃をして事態が解決するとは思っていない。しかし、みんなそれぞれやらなければならないことがあり、公務員として果たさなければならない責任を全うしなければ、その責任を問われてもしかたがないと思う。

 夜牛舎が終わったのは9時過ぎだ。食堂に何かいいものを食べたかったのだがやめにした。カイトが帰ってこなかったので、心配して探しに行ったのだが、山奥の方までキツネを追いかけて行ったようだった。無事で何より!