まだ生きてる! タエ妊娠

 朝一番に、ものすごく重い気持ちと体にムチ打って、車で牛舎に行った。天に祈る気持ちで牛舎に入ったら、蜜三郎はまだ頑張って立っていた。相変わらず息が苦しそうだった。熱を測ると40.2度あった。獣医さんに電話したら、全然事態は良くなっておらず、相変わらず助かる見込みは薄いと言う。同じ時期に産まれた子牛より体がでかく、体力があるから、まだ頑張って立っているのだろうか?

 獣医さんが診に来たが、ほぼ諦めた方がいいそうだ。去勢子牛にカウストン(尿石防止・治療薬)を飲ませるなんて、普段やっている作業なのだが、俺の体調が良くなかったために手元がほんのちょっと狂い、一部が肺に流れ込んでしまったのだ。熱は40.8度にあがっており、脱水症状も考えられた。哺乳瓶を見せたら、一瞬目が輝いて自ら飲もうとやって来たのだが、同室の元六郎に邪魔されて、結局その後は咳き込んで飲めなかった。カテーテルで、補液だけしてやった(危険だが)。

 我が家の子牛のほとんどは、いずれは売られて肥育され、肉になってしまう運命の牛だが、俺たちはそんなことに関係なく可愛がっている。蜜三郎は小さいときに風邪でこじけたのだが、その後の世話によって元気を取り戻し、去勢された後も俺の顔を見ると嬉しそうに寄ってきた子牛だ。その子牛が苦しそうに息をしているのに、救う手だてがないのはなんとも辛い!彼はまだ立って、生きようとしている。経済損失以上に、俺たちの心と体に重大なダメージを与えた。

 食料が無くなったので、町に降りた。すると、とても嬉しい人と2回もすれ違い、ちょっと沈んだ心が軽くなった。その後、美味しいケーキでも買おうと友達の家に向かったら、ちょうどその奥さんが運転する車とすれ違い、がっかりした!
 仕方ないので、おやつはフレンチトーストにした。

 サチコとシゲヨが発情していた。ウチの牛は、大体11時過ぎに発情行動に出るので、種付けのタイミングを計るのが難しい。獣医さんを午後から呼べば、次の日にスタンディングすることもあるし、翌朝呼ぶと、終わってることもよくある。今回は翌朝にしたのだが、失敗だったような気がする。

 夜牛舎に行ったが、蜜三郎は相変わらず
「ハッ、ハッ、ハッ・・・」
苦しそうな息づかいのままだった。被毛に水滴がつくほど汗を出しているようだったので、補液材を2リットルカテーテルで、慎重に飲ませてやった。ちょっと元気が出たようで、バケツにくんでやった湯に、口を付けていた。この事故以来、彼が自分から何かを摂取しようとするのは、初めてのことだ。寝ると苦しいのか、ずっと立ったままだ。
 同室の元六郎が、とても大人しく、のんびりした性格の牛で、体重は150kgほどあるのに、身重の妻が中に入って押しのけることが出来る(そんな冒険するなんて・・・!)。友達の蜜三郎が調子が悪いのを心配している様子で、虐めたり、走り回って刺激したりしないのが救いだ!大人しく、様子をうかがって、寄り添っている。
 今夜も念入りに敷きワラを交換し、その気になったらいつでも食べられるように、良質の一番草も敷いてやった。蜜三郎、頑張れ!

と言うわけで、今夜もトーストだ!