再建工事 幸次郎売れた アカリ誕生!

 朝牛舎の仕事を、奥様方に任せ、俺は糞出しをやった。繋いであった育成牛を運動場に出す時、間違えて臨月のマサコまで放してしまった。乳房が張っていないし、産道も下がっていなかったから大丈夫だろうと思い、つなぎ直さなかった。不良牛のナナミが下痢をしていた。吹きさらしで、風邪をひいたのだろうか・
 崩れて折り重なっている合掌を、ロープで縛りユンボで吊り上げてみた。2ヶ所縛って吊ればそれほど壊れないで吊り上げられた。折れている所を補修しながら積み上げたかったが、補修用の木材が下敷きになっているので、とりあえず脇に積み上げて置いて、補修しながら乗せることにした。2枚は真っ二つになり、7枚救出した。折れているところに、接ぎ木を当てて何とかなるだろう!
 市場の結果が来た。幸次郎は、血統の割りには良い値が着き、牛そのものの良さを評価してもらえて嬉しかった。可愛がった牛が高く評価されると、とても嬉しい!美味しいエサをいっぱい食べ、立派な牛になってくれ!
 義弟親子と、すき焼きを食べる約束になっていたので、早めに牛舎に行った。親牛を呼んだら、マサコが帰ってこない。あわてて懐中電灯を持って運動場に行ったら、端っこの方に立っており、足下に黒い固まりが落ちていた。
「産まれちゃったんだ!」
あわてて駆け寄ると、羊水はキレイに舐め取ってあった。地面が固く凍り付くような寒気が来ており、気がつくのが遅れたら、凍死させるところだった。抱きかかえて牛舎に連れ帰り、ドライヤーで体を乾かしながら暖める。冷え切っており、体の震えが止まらない。毛布を掛け、温風を送り込みながら、タオルで体をこする。暖かいモミジの部屋に連れ込み、さらに暖める。Mikiに交替してさらに念入りに暖めてもらう。そのうち、頭を持ち上げたので、人工初乳をストマックチューブで飲ませて、さらに暖める。やがてマサコも子牛を探しにやってきたが、今は暖めるときなので、会わせるのは後回しにした。名前は「アカリ」になった。顔に精気が戻り、自分で立ち上がったので、一旦家に帰る。
 黒毛和牛のすき焼き肉を、魯山人風のシャブスキーにして食べた。準備にとても手間がかかるのだが、肉の旨さがよくわかり、さっぱり食べられる美味しい料理だ!
 食後、牛舎に行ったら、アカリは立っていた。部屋からだし、牛衣をもう一枚着せて、マサコの乳首に吸い付かせた。アカリは上手にオッパイを吸った。
 ナナミの寝室の吹きさらしを改善するために、ベニヤ板を貼り付けたり、ブルーシートを張ったりした。