今日は朝から雨だった。
 せっかくだから、子牛の去勢手術をすることになった。百次郎は、我が牧場始まって以来の不良牛で、全くなつこうとしない困りものだ。ロープをかけて梁に縛り、顔を上げさせても、尻をふって危なくてしょうがない。陰嚢の先端が途中まで切れた段階で、刃物を持って下腹に入れなくなってしまったのだ! 体を縛ろうとしても、死にものぐるいで暴れ、手がつけられない。弱点である尻尾を紐で縛って押さえようとしたら、尻尾を引きちぎって逃げる始末だ(売値が安くなってしまった)。とうとう下半身も梁に縛り、体を吊り上げる形で固定し、無事睾丸を抜き取る。
 術中、ゴロウは柵の外から熱心に経過を見ていた。睾丸のおやつがもらえることをわかっているのだ。 異様な雰囲気を感じながらも、チビだから中を覗けないカイトは、柵の中に入って、百次郎の股の下を走り回っていた。