タエ出産

 和次郎は、哺乳瓶を拒否したので、ストマックチューブで飲ませる。できれば、1食抜く作戦は取りたくないのだが・・・。腹は減っているようなので、夜には飲ませられると思う。
 モトツボのお産は、まだまだのようだ。新牛舎の、子牛のパドックを作るための巨大ブロック搬入のために、道をつける。大型ユニックが通っても大丈夫なように、しっかり固める。出っ張っていたブロックを持ち上げて、下をスコップで削り、キチンと置き直す。ブロックが足りない部分は、踏みしめやすい土を入れ、ユンボで踏み固めることにする。
 作業中、タエが運動場の片隅で、うずくまっているのを発見する。予定日はまだ先だが、生まれそうな気配がある。今夜あたり生まれるだろうか?なんて思っていた。
 夕方牛を集めたら、タエがいない!懐中電灯をもって、先ほどうずくまっていたところに行く。すると、足下に小さな黒い塊が・・・。あわてて駆け寄ると、まだ湯気が上がった濡れ子が産み落とされていた。小さいけど雄だった。名前は「多恵太郎」になった。抱きかかえて、牛舎まで連れ帰るが、タエがついてこない。子牛を乾草の上に置き、タエを迎えに行く。なかなか子牛を舐めようとしなかったが、他の牛を出し、子牛のそばを俺が離れると、ちょっと舐めているようだった。人工初乳を飲ませ、逆さ釣りをし、ドライヤーで体を乾かす。体重は、29kgだった。勝忠平の雄にしては小さい。でも、早産で小さかったから、母体の負担が軽くてすんだのだ。牛衣を着せ、何とか乳首に吸い付かせようと思ったが、目標を定められず、なかなか吸い付けなかった。とりあえず帰る。
 自宅でネットワークカメラを使って観察した。母乳を飲んでいるようにも見えるし、上手く飲めてないようにも見える。そのうち、脇で眠ってしまった。