M兄弟、乗馬に来る!

オリーブ

M家の兄弟が、乗馬に来た。以前から約束してあったが、ようやく実現だ。
 まず、心得を言い聞かせる。馬は機械ではなく、感情を持った動物であること。だから、その気持ちを気遣いながら、しかし自分の指示には絶対に従わせることも大事である!などと少々偉そうに講釈をたれてすぐに外に。
 ポパイとオリーブをつないで、ブラシがけをさせた。「何でブラシかけんの?」「帽子かぶるとき、髪の毛に砂がついたままかぶったら気持ち悪いべ!」「なるほど!」などとしゃべりながら作業。俺はひづめの裏掘り(ひづめの裏に詰まった泥や馬糞などを除去すること)をする。
 「馬の後ろに立ったら危ないんだぞ」兄弟の一人がもう一人に向かって言うので、

  • 馬は、危害を加えない人がそこにいると認識していれば、後ろに立っても問題ないこと
  • ただし、そっと背後から忍び寄って馬を驚かすようなことがあれば、蹴るかもしれないこと
  • 馬と信頼関係を築くことが大切であること

などを、教えた。
馬が足首の辺りをなでるだけで、自分から足を上げ、じっと裏掘りさせるのを見ていた二人は、今度は馬を信用しすぎ・・・馬をなでて、自分がそこにいることを認識させながらとはいえ、馬の腹の下を行ったり来たりしていた。体のサイズの関係か、Mikiもよくやっているようだが、大きなポパイが不意に動くこともありうるので、念のため、やめるように言った。
 まず、乗ってみせる。手綱の長さ、手の高さ、手綱の張り、脚の合図。言うことはいっぱいあるが、言われてもピンとこないものだ。駆け足までやって見せ、ポパイの調子も確認したところで、交代した。あぶみを最短にしたが、届かない。しょうがない。このままやらせる。手綱を俺が引くものだと思っていたようだが、本人に手綱を持たせ、俺が前を歩いてポパイについてこさせた。途中から俺は外に出て、一人で好きなように歩かせた。ちょっと戸惑っていたが、割とすぐに手綱に慣れ、多少いびつながら大円・小円を描いていた。適当に飽きかけた所で「早足するか?」と声をかけたら「いいの?」あぶみに足も届かないのによくやる。「走っていい?」走ったほうが揺れが少ないのだ。「いいよ!」危うくなると鞍のホーンにつかまりながら走り、早めに止めていた。なかなか度胸のある乗り手だ。
 ポパイが疲れる前に、弟に交代。弟は、兄が手こずっているときにしっかり説明を聞いていたので、割とすんなり動かせていた。
 早足をはじめようとしているなあと思って見ていると、一瞬ポパイが飛び上がった。早足させるために、いきなりポパイの腹を強く蹴ってしまったのだ。見ている俺もびっくりするほどだった。通常スピードアップなど脚の合図をする前には、舌を鳴らしたり、体重を前よりにかけたりして、馬に心の準備をさせる。さらに脚の合図は"蹴り"にならないように、加減する。弟の脚の合図は、いきなりすぎた。3ハネほどして、普通の駆け足にもどった。弟はホーンにつかまって事なきを得た。ポパイも単に驚いただけだったようだ。
 それでも「走っていい?」というので、「いいよ」。やっぱり乗馬は走らなくっちゃ!二人ともチャンと走らせることができ、こっちも満足!小学生二人の冒険心は存分に満たされただろう(?)
 ポパイの馬装を解いて、オリーブに乗る。お産が近いので、走らせない。俺も久しぶりにオリーブに乗った。多少動きは鈍いが(身重だから)、軽い指示でしっかりと動いた。これなら大丈夫だと思い、すぐに交代。ところが、発進しない!?一生懸命わき腹を蹴っているが、俺の前を動こうとしない。仕方なく馬場内を先導して歩き、途中から脇にそれて歩かせた。歩みは遅いが、何とか歩いていた。手綱だけでも、何とか動くポパイと違って、脚の合図を重視するオリーブは扱いにくかったようだ。
 馬をしまって部屋に戻り、ウェスタン競技のビデオを見せた。ついでに、Mikiの準優勝だった演技も見せた。競馬と違うこの競技の面白さが、彼らにわかったかどうかは、定かではない。
 約束どおり、夜牛舎を手伝ってもらった。