ゴロウ

 今朝、目を覚ましてゴロウの様子を見に行った。いつもとは違う呼吸だった。ゴロウって声をかけ、体をさすってやった。もはや、目を開くこともできないけど、たまった目やにを拭いてやり、頭を少し高くして寝かしてやったら、しばらくしてからだが震えて、そしてそのまま静かになった。享年13歳。
 俺が起きてくるのを、必死に待っていたような逝き方だった。もはや、表情とかで表すことができないけど、朝の挨拶を受けてから逝った。
 ゴロウは、いつもそうだった。
 いつも人の気持ちを読み、争いごとを嫌い険悪そうな雰囲気を感じると一生懸命仲裁しようとした。後輩のカイトの面倒をみて、牧場の仕事を教えた。
 北海道瀬棚の牧場を始めたとき、俺はラブラドールを飼いたいと思っていた。ちょうど近所で、出産してすぐに母犬が死んだために、黒ラブを一頭もらって欲しいって話があり、喜んでもらい受けた。
 ゴロウと名づけたその犬は、産れながらに頭の回転が速く、運動量も桁外れの能力を持っていた。俺は、どこに行くにも一緒に連れて行き、沢山話しかけ、沢山触って育てた。繋ぎたくなかったので、荷台に乗ったら降りて良いって言うまで絶対に降りないように躾けたし、海水浴場でお座りって言ったら、置物のようにずっと座り続けた。躾けられたことにより、彼はどこにでも連れて行くことができたし、人前にも出せた。俺は、ゴロウの飼い主であることが誇りだった。それほど自慢の愛犬だった。俺は、こんなに賢く素晴らしい犬に会ったことがなかった。大好きだったし、俺が辛いときにいつも側にいて助けてくれた。
 硫黄島の牧場に引っ越ししたとき、ゴロウとポパイは暑さで死にそうになっていた。二人とも高齢で、このまま死んでしまうかもしれないって思ったけど、なんとか乗り越えてくれた。それから五年経って、最近足腰が特に弱くなったと思っていたのだけど・・・。
 
 お疲れ様、ゴロウ。
 俺のところに来てくれて、ありがとう。君がいてくれたから、俺はとても心強かったよ!
 一緒に暮らした素晴らしい時間を、ありがとう。
 今まで、いっぱい頑張ったね。 もう頑張らなくて良いから、ゆっくりおやすみ。
 そのうち俺も会いに行くから、それまで待っていてくれ。
 ゴロウ、大好きだったよ! 今まで、ありがとう。