チャレンジ50km

 
 誕生日の今日、硫黄島から枕崎への海峡横断レースの試漕の為に、7時半に硫黄島港を出発した。俺は、Aさんとシーカヤックの二人艇だ。
 レース用のアウトリガーカヌーは、乗っている選手も日々鍛えているからというのもあるけど、ものすごい速さだ。Aさんは鍛えているけど、俺はこの一ヶ月間カヤックフッシングがてらに体を慣す程度の事しか出来ていない。とにかく、力一杯漕ぐだけだ。
 硫黄島港を出たカヌーは、恋人岬を回って西の立神を過ぎたところで、硫黄島を離れて枕崎を目指した。速度は、およそ9km/h。一応、大会参加資格として、8km/h以上でこぎ続けられることとなっているので、今のペースでこぎ続けられたら良いてことなのだけど・・・。
 海峡横断をすることは、海上保安庁にも連絡をしてあったのだけど、口永良部島の噴火の様子を見に来たついでなのか? ヘリが上空で旋回したり巡視船がかなり離れたところから様子を見てくれたりして、航行する大型船が俺たちに接近することが無かったのも、位置情報を流してくれたためかもしれない。ありがとうございます。
 20kmを過ぎたあたりで、俺はかなりバテていた。海が荒れてきて、二人の力を合わせなければならない時に、前を漕ぐ俺のリズムがバラバラになって後ろの人が合わせられない。
 だんだん何が高くなり、バランスを取る後ろのAさんが、転覆回避行動を取る機会が増えた。また、カヌーの中に水が入ってきて、時々水を排出しなければならない。
 かけ声を上げながらなんとか漕いでいたのだけど、とうとうラダー(舵)が壊れてしまい、姿勢や方向を制御することが出来なくなって、40km地点でリタイヤして伴走船に回収されてしまった。平均速度は、8km/hだった。
 カヌーに乗っているとそれほど感じなかったのだけど、伴走の漁船は猛烈に揺れていた。腕がもげそうなほど痛かった俺は、激しい雨の中に倒れ込んでしばらく動けなかった。
 そんな悪条件の中、アウトリガーカヌーの選手は、集中力を途切れさせること無くこぎ続け、全行程60km以上を漕ぎきって、枕崎までたどり着いた。おめでとうございます。