脱柵

 最近の日課は、湾放牧地で柵を越えて海側に出ている牛を呼び戻すことになっている。放牧されている牛が少なく、餌は豊富にあるはずなのに、なぜあのような辺境に毎日行きたがるのか、とても不思議でならない。そして、出るときは毎日自発的に出るくせに、ちょっと誘導してやらないと、帰り道がわからないって言うのも、不思議でならない。
 それにしても、毎日深い草の中を歩いて迎えに行く者の身になって、脱走を止めるとか帰り道を覚えるとかしてくれたら良いのに・・・。脱柵場所はわかっているが、注文してある有刺鉄線が届かず、手の着けようがないのだ。
 馬なら、脱策した場所がただの崖と解れば、毎日見に行くなんて無駄なこともしないし、一度通った道は絶対に忘れないのだけど・・・。牛だから仕方ないのだ!