奉納

 今年も、八朔踊りに参加できなかった。毎年この時期は、留守を守る人が居ないため、参加すると言える状況に無い。今日も一人だから、頑張って踊りが始まる時間に間に合うかどうかと言うところで、踊り子はそれより前に集まらなければならない。
 と言っても、日中は比較的時間があり、祭りの時お客さんが食べる魚を奉納するために、ちょっと潜ってきた。捕ったのは、ギンガメアジとハマフエフキだ。
 ギンガメアジは、この島に来たばかりの頃、俺を見ると『なんだこいつ?』とわざわざ見に来て、俺の周りを2周回ってくれたので、簡単に突くことが出来た。ところが、最近は俺のことを覚えたらしく、見かけてみ決して近づこうとはしない。回遊魚は高速で泳ぐけど、射程に入ってくれたらチャンスはあるのだけど・・・。今日のギンガメアジも、群れの魚は遠巻きに素通りしてしまったのだけど、岩礁地帯でふらふらしている単独行動派を、岩陰から接近して捕らえた。
 ハマフエフキは、深いところにいる個体を、真上から一気に接近して・・・。
 
 早めに、午後の仕事を終わらせようと思ったら、初産のまことが産気づいた。予定より早めなのだが、こういうことがあるから、一人の時は約束がしにくいのだ。
 助産して、大きな男の子を出産させた。『誠太郎』だ。へその緒を消毒し、人工初乳を飲ませてから、踊りが始まるぎりぎりの時間に帰ることが出来た。