垂乳根次郎

 午前中、チャチャッと仕事をしてから、Y君とカヌーで出かけることになった。
 低気圧が硫黄島の近くにあるのだが、風が無く海は凪ぎていた。
 坂本温泉から出かけてみたら、島の北側は意外にうねりがあった。Y君のパドリングはかなり上達しており、波をモノともせずにカヌーは進んだ。 
 平家城を超えたところで、目的地が見えたのだが、波柱が立っているのが見えた。沖の方は、波が荒いようだ。それでも、出発から35分で目的地に着いた。
 上陸ポイントは、波の裏にあって問題なく船を着けられた。すぐに、岩の上にカヌーを持ち上げる。
 準備して海に潜ったら、シャンパンシャワー状態で前が見えない! 潜って泡の下に入ったが、浮遊物が多くてあまり透明度は高くない。とりあえずY君と離れないようにして、アカジョウに出会う確率の高い場所に向かった。だが、波が強くて水中はサイダーの中にいる状態になり、アカジョウのいる海底を探るには、いちいち潜って探索しなければならない。ここはホオジロザメに会ったポイントだから、岩から離れるのは怖いし・・・。
 とりあえず、手ぶらで帰るのは寂しいので、大型のメジナを二尾突き、貝を拾って獲物を確保した。寒さで、体が震えてくる。波も強くなってきたので、帰ることにした。
 
 帰ってみたら、携帯に駆けつけ通報メールが来ていた。俺たちが出発してすぐに届いたらしい。Yumiはすでに牛舎に駆けつけていた。
 たらちねは、元気な男の子を出産していた。安産だった。垂乳根次郎(喜亀忠産子)だ。へその緒を消毒しようと思ったら、たらちねが警戒し襲ってきそうな気配を感じたので、ロープでつないだ。
 その後、胎盤も降りて、母乳も飲ませていた。