休日2

 狭くて暑いカプセルの中で、目覚めた。3時だった。
 駆け付け通報メールが届いた。セナが、一次破水したのだ。
 初産のセナのお産は、是非介助したい。だけど、俺は行ってやれない。留守を守るK君に、連絡するタイミングを迷う。
 段取り通報メール無しに、いきなりの駆け付け通報メールだから、単なるセンサーの抜け落ちも考えられる。こんな時、監視カメラと併用なら、遠隔地からでも正確な指示が出せるのに…。まだ、使用許可が降りない。
 初産は時間がかかるから、ギリギリまで我慢して、電話した。
 牛舎に行ってもらったら、既に前足が出ていて、間もなく舌も見えたらしい。生きているか、解らないとか! すぐに、引っ張って貰う。出てきたのは、大きな雄子牛。羊水を吐かせる為に、逆さ吊りする事を解っていて、実行しようとしてくれたが、重すぎて持ち上がらないらしい! 完全に吊り上げなくても、無事羊水は吐かせることが出来て、身体をこすってもらった。
 無事に産ませることが出来て、良かった。K君も、達成感があって良かった! ここで、俺が遠慮して、もしもお産失敗だったら、余計な気を使ったことが仇となり、嫌な思いをさせたかも知れない。彼の喜びの言葉を聞いて、良かったな〜と胸をなで下ろした。
 街に出かけたら、人が沢山いすぎて驚いた。人の流れは、まるで約束事が決まっているかのように、周囲に迷惑をかけないように流れていた。俺は、その流れに乗れず、酔ってしまいそうだった。
 夕方、通常ならすでに仕事を終えて帰宅しているような時間に、K君から電話があった。
 愛馬ポパイが、苦しそうに倒れ込んでいると・・・。
 すぐに疝痛と思った。出発前に、俺はポパイの体を触っていて、健康状態が悪くないことを確認していた。だから、このような健康悪化で考えられるのは、俺の知る限り疝痛しか無い。
 馬にとって、疝痛は命に関わる症状で、短時間で急激に悪化し、死に至ることもある。ポパイは、ずっと放牧で暮らしており、体力もあるから、何とか耐えてくれるのでは無いかと思ったが、17歳と高齢である。
 寒い北海道から、暑い鹿児島に連れてこられ、一時期は暑さでとても辛そうで、柵の破れ目から脱走したとき、北海道に帰ろうと思って港に行き、船が来るのを待っていたことがある。船に乗って連れてこられた事を覚えていて、それに乗れば北海道に帰れると思ったようだけど・・・。
 ポパイは、俺にとってはとても大事な馬だ。それでも、葛藤はあった。疝痛なら、助かるかどうかは、明日の朝には決まっていると思った。行っても間に合わない。または、行ったら元気になっていたって事も、充分考えられる。でも、もしもこれが最期なら、看取ってやるべきだし、間に合わなくても亡骸を大切に扱うことが、友としての役目だと思い、帰ることを決意したけど、それまでにはずいぶん時間がかかった。 
 予約の変更とか乗り継ぎとか、とっても苦手な俺は、結局一時間ほどしか寝ることができなかった。無事でいてくれよ!