引っ越し

 競りから帰ると、牛達の引っ越しが待っていることが多い。
 まずは、大牛舎に、すずね、こたま、かぐら、いおりを引っ越しさせた。広い部屋に入れられ、みんなとても興奮して、走り回っていた。
 放牧地から、出産間際のとまと(忠茂勝産子)とせな(百合茂産子)を連れ帰った。ビタミン剤を飲ませ、子牛下痢ワクチンを接種した。子牛が生まれて、母乳を飲むと、下痢の抗体を受け取ることが出来るのだ。
 
 「皆さん、どうして休みの度に、鹿児島に上がりたがるのか、よく解らない!」
と言っている人と、話しをする機会があった。
 『せっかく鹿児島に上がったから、美味しいモノを食べよう!』という考え方が、理解できないとか・・・。
 俺は、そういう機会があったら、毎食では無いけど、ある程度の予算を取って、楽しんでから帰る事が多い。理由は・・・島に居て満たされない部分を、補っているかな? 独り者で、島では自分で作らないと、何も食べることが出来ない。一人の食事は寂しく、また自分の為だけに、手の込んだ料理は作りたくない。だから、鹿児島に上がったときくらい、自分では作らない料理を楽しみたい。
 その人は、素敵な奥さんとお子さんが居て、幸せなんだと思う。俺も、そういう家族が居たら、一人で食べ歩いたりしない。