11月競り

 五時半に目覚ましが鳴り、出かける準備だ。ホテルをチェックアウトして、荷物を全部持って出かけた。
 体重測定に間に合わなかったから、いきなり競り当日なのだが、かなり調子が狂う。
 何となく朝飯を買って、十島村役場の前に向かったら、ちょうどバスが出て行くのが見えた! そのバス待って!
 荷物を持ったまま、走って追いかける。バスは、三島村役場の方に向かうのだが、信号待ちしている間に、バスより先に役場に着いた。ホッとする。
 十島村の牛飼いさんも、三島村の牛飼いさんも、今月はとても少なかった。理由は、市場にある牛舎に着いてわかった。三島の牛は、15頭しか来ていなかった。種付けが上手くいかず、出荷する子牛がとても少ないのだ。
 とりあえず、急いで着替えて、牛を繋ぐ作業に移る。そして、最後のブラッシングをして、綺麗にしてやる。
 体重を見たら、丸美次郎などは、日令274日で体重が374kgもあって、二ヶ月前に出荷すれば、もっと値が伸びたのに・・・と後悔した。
 鹿児島中央市場は、競りの始まりと終わり頃、値が伸びない! 俺が肥育屋さんなら、このお買い得の時間を見逃さないのだけれど・・・。
 今日も安いな〜〜〜!
 そう思いながら、体重と値段を、名簿に書き込んでいった。
 牛を引いて、競りの会場に入り、電光掲示板の数字が上がっていくのを見るのは、なかなか緊張するのだ。始めは勢いよく上がっていく数字が、途中で失速する。競りをしている人が、ボタンで駆け引きをしているのだ。 北海道に居た頃は、農協職員が売る側のボタンを押して、適正と思う価格まで競り上げていた。この価格なら、購買者が競ってくるはずだというのは、相場や経験で判断するのだが、売り主側のボタンを押さないと、競り価格は一頭あたり2〜3万円安くなるようだ。だから、北海道南市場の競りでは、売り主がボタンを押し忘れていると、競りがやり直されるほど重要視されている。
 だけど、時としては読みを誤って、主取りしてしまうことがあり、その場合は買ってくれそうな購買者のところ(最後まで競ってくれた人とか)に、最終の価格よりちょっとだけ下げて売っていた。
 三島村や十島村には、農協が無いので、このボタンを押す人が居ない。農協の代わりを役場職員がしているけど、売り主のボタンを押して、主取りになった時の責任とか個人的に売買するとかが面倒なのかな? あまり頑張らなくても良いから、一頭あたり5000円でも高くなるだけで、だいぶ違うと思うのだけど・・・。
 全体としては、いつも通りの相場だったかな? でかすぎて、且つ去勢が遅れた丸美次郎は安かったけど、4頭全員DG1kgをこえていたから、平均は40万円を上回ってくれた。
 
 競りが終わったら、高速バスに乗って、八代に向かった。新幹線で帰るより、かなり安いのだ。