ローストチキン

 いつも通り、和泉太郎の報告。


 寝ていたのが、突然起き上がって、ピョンピョン跳び始めた。元気になったなぁ! 始めてみせる姿に喜んで見ていたら、ばったり転んで、ミルクを飲むときにはぐったりしていた。

 スタンチョン調教中のせん(安福久)は、実は怒りんぼだ。
 最近、自力で頭を突っ込めるようになってきたのだが、まだ一人では出られない。だから、俺が出してやるのだが、鼻輪をつかんで頭を動かされるのが気に入らないらしく、頭をひねったり、吠えたり、鼻水を飛ばしたり・・・。
 いい加減、覚えろよなぁ。

 小屋下放牧地の母牛たちに、ビタミン剤を飲ませた。簡単に飲んでくれる牛も居れば、どうしても上を向いてくれず、ロープで縛って飲ませなければならない牛もいた。ビタミンを与える事で、良い発情が来て、受胎しやすくなると信じてやっている。実際、発情回復が遅れていた母牛に飲ませたら、数日後に発情が来た例が少なくない。繁殖農家は、母牛が発情して種付けできて、妊娠して、子供が生まれてくれないと、儲からないのだ。みんな早く妊娠して、小屋下放牧地を卒業してくれよ!

 時々、激しい雨が降っていた。従業員さんには、午前中休んでもらい、ホークと見回りに行った。今日の雨は、俺が何かをしようとすると、勢いを増すようだった。雨の止み間を狙ったつもりだったのに、放牧地に着いたら、車から降りることも出来なかった。牛も集まっていない。
 すごすご帰り、書類整理をした。

 船が入港したときも、雨が降っていた。
 エサを4トン頼んでいた俺は、ユニックで出かけ、2トンずつ運び、飼料タンクに入れた。雨が降っていると、エサが湿り、カビの原因だ。いつもなら、こんなに雨が降っている場合、明日が晴れなら明日下ろしてもらうし、そうで無いなら半分だけ下ろして残りは明日にする。でも、明日は出荷で出かけてしまうので、やむなく雨の中濡れた地面に下ろしてもらった。
 大急ぎで、2トンずつ牧場に運ぶ。急いで餌タンクに登り、500kgずつ吊して餌を入れる。雨が降り込むし、餌袋に着いた水も流れ込む。夏なら、一発でカビだらけだ。雨は嫌である。

 仕事の途中で、地鶏の丸焼きをしに、家に帰る。オーブンをセットして・・・。
 本当は、焼いている途中で、流れ出た脂をすくってかけると、焼き色がこんがりとても綺麗に仕上がるが、専業主婦では無いので仕方が無い。

 仕事を終えて帰ると、ちょうど焼き上がったところだった。脂をすくってかけ、もう一度ちょっと焼いて、焼き色をつけた。
 従業員さんの家に運び、切り分けた。Kくんも参加し、ホークとの最後の晩餐だ。いつも作るブロイラーの雛鳥と違い、歯ごたえはしっかりしているし、脂身は少ないけど、味が濃く、胸肉でもぱさぱさ感が無く美味しかった。