12月競り

 都合により、俺はユニックで伊集院の競り会場に行くことになっていたので、かなり早起きした。荷造りして、港の駐車場まで歩いて行き、ユニックに乗り込んだ。道は空いていて、とても走りやすかった。
 伊集院の鹿児島中央市場に着き、餌係の人としばらく話をした後、牛を縛り始めた。前回や前々回と違い、今月は三島村の子牛の数が多かった。やがてマイクロバスも到着して、人が集まった。俺は、獣医さんの補助員として、下痢をしている子牛に静脈注射をするために、押さえる役割を果たした。
 所定の位置に子牛を繋ぎ、皆、それぞれ最後のブラッシングをしに、自分の子牛の所に行った。俺も、6頭の子牛を二回回って、綺麗に仕上げた。
 競りが始まってみて、びっくりした。値段が伸びないのだ。俺の最初の子牛は、296日で303kgに育った、去勢の昇太郎だった。体型も悪くなく、当然40万円はいくと思っていたのだが、全然伸びなかった。
 相場が落ちたのかと思ったが、徐々に値が戻り、二頭目以降は、先月並みの値段で落札された。たぶん、始まりは競りに参加した人の数が、少なかったのでは無いだろうか?全体としては、先月より安めで、特に人気の無い子牛は、猛烈に値下がりしていたが、生産意欲は充分あり、繁殖用の雌牛は高かった。
 最後のこはるは、ちょっと小さかったから、値段は猛烈に安かったが、合計金額はまぁこんなモンかなと思える金額になった。

 後片付けをして、ユニックで会場を後にした。
 吹上浜沿いに走ったのだが、砂が舞うせいか、車道は結構内陸を走る。だから、海を見ることは出来ない。加世田を抜けて、笠沙に入った。実は、ここから先の明細地図が無く、道順を聞いていなかった。本当は、助手席に可愛いナビゲーターが乗る予定だったからだ。予定は未定であって決定では無い。準備の甘さが祟り、近道をしようと峠越えの道に入ったら、標識には知らない地名ばかりが表示され、さんざん狭いワインディングロードを荷物を積んだユニックで走った挙げ句、かなりずれた海岸に出た。
 でも、時間はたっぷりあるのだ。綺麗な河岸沿いの隘路を、気持ちよくドライブして、笠沙美術館に到着した。友人のカフェは、車道から細い急坂を下った所にあった。下ってしまったら、明日登れるかと不安だったが、濡れていなければ大丈夫かなと思ってそのまま降りた。思ったより大きな建物が、友人のカフェだった。
 他の友人が集まるまで、炭を起こしたり、降り出した雨の対策で、まだトタンを張っていない屋根にブルーシートをかけたりして過ごした。暗くなってから、友人も集まり、鳥のせせりや和牛を焼いて食べながら、話をしたのだけれど、俺は寝不足が祟ってウトウトしてしまったのであった。