苦労した日

 相変わらず風が強いのだった。風が強いと、乾草を丸める作業も、昨夜耕したイタリアン畑に種を蒔くことも出来ない。
 それでも、採草地で動かなくなったフォード6610をそのままにしておく訳にはいかないのだ。ファーガソンに、燃料とブースターケーブルを積んで出かけた。安物のブースターケーブルは、クリップの部分が鉄で出来ているので、硫黄島ではボロボロに錆びてしまい、接触が悪くなる。何とかならんのかな?銅製のクリップなら、こんなに簡単にボロボロにならないのでは無いかな?あまりに接触が悪いから、線をむき出しにして、ネジに巻き付けた。
 だが、セルは回り煙が出るのに、エンジンがかからない。煙が出るということは、燃料は行っている。回転力が足りなくて爆発しないのなら、ファーガソンのエンジンをかけっぱなしにして、フォードのバッテリーを充電するしか無い。
 状況は、よろしくなかった。フォード6610のエンジンがかからないのは、前述の通りだが、他に油圧で上下するロアリンクの動きが悪い。テッターレーキのタイヤがパンクしている。ロールを持ち帰ろうとベールグリッパーを作動させたら、油圧ホースが破裂して辺り一面を油煙が覆った。極めつけは、充電させたまま歩いて帰るとき、携帯を落としてしまったようだ。
 いくつも悪いことが重なると、時には一つも解決できなくなることがある。今日は、くじけず頑張ったけど・・・。

 実は、仕事だけで無く、文化祭に合唱の一員として参加することになっていた。10時20分の出番だったので余裕で仕事していたら、プログラム進行が早く、急いで行ったが練習する時間なし!いきなり歌って、音程を取ったり声を出せるほど上手くない。みんなに迷惑かけたかな?

 出番が終わるとすぐに、牧場に飛んで帰り、仕事を続けた。さんざん苦労したのだけれど、ようやくフォード6610のエンジンが掛かり、テッターレーキのパンクも修理できた。携帯電話も、見つかった。ちなみにこの携帯は、地味なピンクなのだが、もう一色選べた深緑色だったら、牧草地に落としたら見つからなかっただろう。本当は、ショッキングピンクのような目立つ色が欲しかったのだけどね。
 エンジンがかかったから、全面にテッターをかけた。ひっくり返すと、まだ深緑色した牧草も、明日になれば丸めることが出来るだろうか?晴れてればね。