八月競り
8月競り当日である。例によって4時ごろ目覚めた俺は、何もすることの無いホテルの一室で、映画を観てすごした。
曇っていたので、ちょっと涼しかった。急いで所定の場所に子牛をつなぎ、最終ブラッシングをした。
競りが始まってみたら、安かった先月に比べて、オスはそれほど下がったという印象は無かっただが、メスは確実に下がっていた。
元十郎は、もうちょっと伸びるかと思った、それに対し、登太郎は元十郎に迫る勢いだった。まぁ、元十郎は子牛の頃に死にかけているから、こうやって競りにかけられるなんて、生きてるだけで丸儲けだ。
6頭も競りにかけると、それを引いている俺は、一日牛を引いていて、相場の動向を調べるゆとりも無い。
今日連れてきた俺の牛は、土龍波とか財金茂といった、あまり人気が無い血統だった。種付けは、約二年前だ。つまり、二年後の市場ニーズを予測して、種付けをしなければならない。これは、意外に難しいのだ。人気の種は、頭数分には足りないので、現在は人気が出ていない種の将来を信じて付けなければならないから・・・。