熱闘会議

 気になるのは、湾の新人放牧牛だ。
 早めに見に行った。シゲヨを入れたことで、牛たちが落ち着いていた。おっとりした性格のシゲヨは、呼ばれるとやってきた。ほかの子牛たちは、その後ろに従った。こうやって、ひとまとまりで動いてくれると、管理しやすい。なぜか、見慣れない牛が、幅をきかせていた。うちの新人牛たちより、ちょっと年上のお隣の牛だ。捕まえようとしたが、跳ね回って無理だった。とりあえず、隣に入り込んだうちの牛を捕まえに行った。
 竹の棒に、輪っかにしたロープを取り付けて追い詰めようとするのだが、笹が邪魔して輪っかに頭を通せない。あとちょっとのところで、逃げられてしまう。
 作戦を変え、柵の一部を開き、追い込むことにした。若い方は、簡単に追い込めたのだが、緑10番タカラは、寸前できびすを返して逃げてしまった。竹林の中に逃げ込まれ、旧枠場跡に追い込んだところで、ロープをかけた。やれやれ・・。
 子牛の一斉防除をした。
 ほ乳ロボット小屋の子牛に、抗生物質の注射と、コクシジュウムの治療薬を投与した。
 
 昨日のプール掃除に続いて、今日は熱闘会議の準備だ。テントを立てたり、ドラム缶のバーベキューコンロを運んだり・・・。
 夕方四時から、熱闘会議に出席した。
 この時間は、牛飼いにとって最も稼ぎ時なのだが、牛舎に籠もってばかりで意見を言わないと、事態は好転しないのだ。
 基本的に、島に人を呼んだり、定住するにはどうしたら良いか?という議題だ。定住するには、仕事が無いのがネックになっていた。
 俺は、いつも人手不足で、手伝ってほしいのに人が居ない、という状況だ。こういう情報が共有できていれば、お互いに助かるのでは無いだろうか?また、島で仕事を得て定住するなら、黒毛和牛の繁殖に携わるのが一番の早道だ。
 牛飼いは、牛を飼い始めてから収入があるまでに、2年ほどかかる。その間、国の研修制度を利用すれば、農業技術を習得しながら給与をもらうことができる。硫黄島には、さらに開墾する計画もあり、そこに就農することも可能だ。
 てな話をしたところ、興味を示された方もおられ、懇親会のバーベキューでは、いろいろな方に話しかけられたのであった。でも、俺は酔っ払ってしまって、あまり覚えてないのだ。