愛犬ごろう

 餌やり当番で牛舎に行くと、子牛たちは一斉に俺を見つめて、早く餌をくれとねだる。昨夕沢山与えた牧草は、ほぼ食べ終えていた。
 季候が良くなって、子牛たちの体調も良いようだ。冬の当番の時は、鼻を垂れたり、下痢する子牛が多く、食べ残しが多かったのに・・・。
 餌は、一頭2kg強/日と言われていたが、一瞬で食べ尽くしてもっとくれと訴えるので、追加してやることになるのだ。多めにやると、強い子牛が独占して食べた場合、腹をこわして下痢をしてしまうのだが、頭数分の塊を作って与え、食べ終えるまで箒を持って見張っていると、意地悪して独占しているような子牛は見かけなかったから、下痢をすることもあるまい。
 食べ終えたら、グレイングラスという輸入乾草を与える。これも、みんなバリボリ食べる。

 愛犬ゴロウは、賢い(親ばか)のだが、要領が悪い。
 預かって貰っている従業員さんの家で、夜中に用便を足したいと、家の人を起こすらしい。カイトやそこの家の犬が、静かに寝ているのに、一番賢いはずのゴロウがドタバタと、外に連れて行けと騒ぐので、寝不足になった従業員さんは、ゴロウを外に繋ごうかと言い出してしまった。
 一応、ゴロウだって家の中で用便を足してはいけないと、教えてある。家に帰るときは、済ませてくることになっている。
 今回の出来事を考察したのだが、原因は牛の餌を盗み食いしているからでは無いかと、疑われた。牛の餌は、繊維がとても多く、犬が食べると激しい便意を催してしまうのだ。
 ゴロウは、俺が居るととても良い子で、常に模範的な飼い犬であろうと努力する。頑張っている自分が好きで、いつも120%の能力を出して、良いところを見せようとする。
 でも、誰だって息を抜くところがあるのだ。
 ゴロウは、俺が市場に行っているとき、完全にお馬鹿な犬に成り下がり、泥だらけになって走り回ったり、埋葬した子牛を掘り出したり、歯止めがきかなくなる。
 昼間、従業員さんに見張って貰ったら、馬の餌を盗み食いしているところを発見された。
 ゴロウは、愛馬ポパイにライバル心を持っており、彼の餌を横取りすることは、ゴロウにとっては二重の快感らしい。
 今日からは、夜中のトイレ、大丈夫かな?