ゴロウ行方不明

 結構真面目に雨が降っていた。雨の日は、テンションが下がるのだ。三つある牛舎を、行ったり来たりするたびに濡れるが、雨具は着ない。牛は、人が見ているほうがよく食べるので、飼槽に餌を入れてからも、何度も見に行ったり、箒で餌を動かしたり、お代わりを足したりする。
 先日生まれた子牛は、いつの間にかベニコと名付けられていたが、今日、超早期母子分離をした。食の細いキキよりも小さく、夕方ミルクを飲ませるのに苦労した。今日のところは、1.8リットル飲んだところで、力尽きてしまった(飲ませる人が・・・)。明日は、元気に飲めるかな?
 ゴロウが、行方不明になった。
 牛舎を守るのが仕事の彼らは、基本的に牛舎から声が届かない範囲に、勝手に行くことは無い。以前、カイトが行方不明になったときは、竹やぶの中に捨てられていたバラ線が刺さり、皮膚が絡まって一人では取れなくなっていた。でも、うちの犬たちは、鳴き叫んで助けを呼べないんだ。大人しく、助けてくれるのを待っている。
 行方不明になったゴロウも、おそらくはどこかで助けを待っているはずだ。彼が好んで入る小屋を見て回ったが、気配は感じられなかった。竹藪を探したが、風が強くて、よく分からない。遊びに行っているかもしれないと思い、牛の見回りついでに、車で走ってみたが、どこにもいなかった。
 ここで、過去にあった行方不明事件を思い出してみる。
 本当に行方不明だったのは、北海道時代にカイトが荷台から飛び降りた時だけで、その時は探し回って700kmほど走ったっけ。生還まで一週間ほどかかった。あとは、倉庫や地下室に間違って閉じ込めたというもので、ゴロウは開けてくれるのを信じて、大人しく待っていた。
 ふと、従業員さんに、事務所に閉じ込めた可能性は無いか、聞いてみた。本人は、絶対にそんなはずは無いと、断言・・・。とにかく、事務所を見てもらった。
 ゴロウは、しっぽを勢いよく振って、嬉しそうに待っていた。呼ばれたら、返事しろよなぁ!