大地震と津波

 茂子太郎と愛太郎は、二頭とも脱走して彷徨っていた。愛太郎は、哺乳瓶の乳首をくわえさせると、最初の一口目から勢いよく吸った。一方、茂子太郎は激しく抵抗し、一旦休憩を挟んでようやく飲ませた。
 哺乳ロボットに慣れていないこはるとレモンは、指で誘導してやる。記録を見ると、レモンは俺が誘導する前に、一度飲んでいた。舌曲がりのこはるも、一生懸命吸っている。
 後継牛のはなことモモカの部屋に、自家保留予定のおりひめ(百合茂産子)を合流させた。来月出荷くらいの月齢なのだが、270kgで買ったはなこやモモカより、体格が良かった。当然、態度もでかい。
 後継牛として、あと二頭買って貰うために、別な市場に行ってもらっていた。電話してみたら、相場が高すぎて、百合茂や安福久には手が出ないそうだ。かろうじて、勝忠平産子を一頭落札したとか・・・午後の競りで、あと一頭買う予定・・・。

 普通に仕事をしていたのだが、うちで働いてくれている人の携帯が鳴った。その人が言うには、ものすごい地震が東北で発生し、津波の恐れがあるので、島の人は全員、避難することになったらしい。
 と言っても、まだ仕事が終わっていないし、牧場は標高が高いので、津波の恐れは全くない。子供が心配だというので、先に帰ってもらい、俺はとりあえず残りの仕事を終わらせた。
 避難所は、冒険ランドに変更されていて、皆さんそろっておられた。硫黄島は、集落が海辺に集中しているから、津波には弱いのだ。
 婦人会の人たちが、おにぎりと味噌汁を出してくた。とりあえず、家には帰れなかった。避難所でテレビを観たら、史上最大の地震ということで、被害の大きさは想像をはるかに超えていた。