クジャク

 硫黄島には、ヤマハリゾート時代に放された孔雀が住んでいる。深い竹藪が絶好の隠れ家となり、自然繁殖してその数を増やしている。
 島の人たちにとって、たぶんあまりありがたいモノではない。畑や花壇を荒らす害鳥なのだ。防鳥ネットを着けなければ、ほとんど何も栽培できない。牛飼いの俺にとっても、牛の餌を横取りし、糞を撒き散らす厄介者だ。俺の気持ちを理解しているゴロウとカイトは、見つけ次第追い払い、ときどき捕まえて食べている。
 春は、その孔雀たちにとっても、恋の季節だ。普段は藪の中にいるのに、開けた所(墓場とか)に集まり、雄は羽を広げて求愛している。
 孔雀には、白い個体も居て、ちょっと綺麗だ。飾り羽根の先端に、丸い模様が出来るはずなんだが、現段階では完成していない。まだ、発情期の初期なのかな?あっちこっちから、求愛の歌が聞こえて、五月蝿い。

 産後なかなか発情しない牛には、牛用のビタミン剤を飲ませている。すると、いい感じで発情がやってくる。マァ、これをやって発情が来なかったら、高齢牛は更新されてしまうのだ。

 朝から、赤の2番が鳴いていた。尻尾が上がっているから、産気づいたのだろう。鳴いているが、腹を蹴ったりという行動が始まったのは、3時頃からだった。一次破水してからも、なかなか進まない。
 心配で、枠場に繋いで調べてみたら、胎児は正常位だった。足が細いわりに頭がでかいから、難産していた。そのまま、助産に入った。