埋葬

 そういえば、体重測定の日、鹿児島から新燃岳の噴煙が見えていた。黒っぽい噴煙は、キノコ雲のようにかなり上空まで立ち上っていた。
 こっちの硫黄岳は、穏やかに煙を上げている。

 コトブキを、あかねと同室にした。
 くるみとるるを、離乳して電柱牛舎に入れた。ハヤテは、制限哺乳部屋に入れた。
 哺乳ロボット小屋は、ときどきチェックしないと、首に下げたタグが外れてしまう。利用状況を見ると、子牛は頻繁にミルクを飲む枠に入っている。実際には、一度吸うと、1時間くらいは飲ませてもらえない。『飲む権利のある子牛』を調べると、一頭もいなかった。なかなか積極的でよろしい。

 穴を掘り始めた。
 クボタのフロントローダーで、とりあえず浅く掘り、そこからスコップで本格的に掘り始めた。
 友だちの牛飼いさんには、牛を埋葬するときは、『生前のその牛を思いながら、スコップで穴を掘る。』という人がいる。ユンボ派の俺は、感心しつつその人の日記を読みながら、『あれ?今は、勝手に埋葬できないはずでは・・・。』と気がついて、慌ててその旨を伝え、翌日掘り起こして、適正処理されたことがある。
 島では、適正処理するための交通機関が無いので、埋却処分することになっているのだ。牛を埋めるには、縦2m幅1m深さ1.5mの穴が必要だ。スコップで、そんな大穴を掘るのは、初めてだ。だんだん深くなってくると、土を外に出すのも大変になってくる。
 穴が開いたところで、遺体にかけてあったブルーシートを剥いだ。驚いたことに、はぎひらふくはなんとも言えず穏やかな顔をしていた。自らの命と引き替えに、大きくて元気な雄子牛を出産した達成感を感じつつ、最期まで幸せそうな顔をして、子牛を舐めていたと言うが、きっとその通りなんだろう。
 特に愛着のあったはぎひらふくを、屋根が低く柵がある牛舎から、どうやって丁寧に運び出すか悩んだ。体重は450kgはあるので、人力ではどうしようもない。四足をロープでしばり、トラクターのフロントローダーで吊り上げるが、屋根が邪魔でほとんど持ち上げられない。足場の悪い所で、何度か切り返し、扉から無事吊り出すことが出来、ホッとした。穴は、ジャストサイズだった。十分な深さがあるので、安心して眠れると思う。

 何時間も力仕事をして、俺は汗だくである。
 せっかく整体で矯正された背骨や骨盤は、この作業で元に戻ってしまったようで、ジャワ原人のような歩き方に逆戻りである(T_T)/~~~