10月市場

 七時に、マイクロバスが迎えに来た。のこのこ乗り込み、市場に出かけた。
 餌を食べ終わった子牛たちを、各部屋ごとにロープでつなぎ、市場番号に合わせた位置に連れて行く。
 市場が始まったが、俺が最初に売った牛は、体重198kgの去勢だ。当然安い。その他にも、220㎏去勢、240㎏雌が続き、キロ千円前後の悲しい状態だった。タダ、こんなに悪い牛でもキロ千円が期待できるところを見ると、相場は良くなっていると思う。午前中の牛は、コジケの三頭で、仕方なく持ってきたのだから・・・。
 お弁当を食べて、午後からの市場開始だ。

 午後からの牛は、279kgの雌と、263kgの去勢だ。雌は、気高二重掛けの勝忠平だった。繁殖屋さんが見に来て、腰幅や体高、乳房などを念入りに見ていった。期待が高まる。
 と言っても、実は持って帰るつもりの牛だった。飼っているときから、部屋に入っても簡単に捕まり、引いても素直だし、よく懐いていたのだ。後継牛としては、とても飼いやすい。
 入場してみたら、電光掲示板の数字はどんどん上がり、予想より10万円高い数字で止まった。持ち帰りのつもりでいたら、係のお姉さんにお客さんのつなぎ場を指定された。売れてしまったのだ。まぁ、現金が欲しかったし・・・。
 去勢は、体重が軽かった割りには、値が伸びた。午後の方が、全体の相場が上がったような気がする。午後からの二頭に救われ、ようやく平均30万円。
 子牛の飼育では、始めの3ヶ月でその後の将来がかなり決まってしまう。午後の二頭の値が良かったのは、俺の手柄ではない。これから、手間をかけ工夫をして、自分の牛を作っていきたい。