押し入り牛

 誰も信じてくれないと思うが、俺は争い事は本当は好きではない。でも、力で虐げられたり、侮辱されたり、事実をねじ曲げられたりするのは、もっと嫌いである。たとえどんなに不利益があっても、今回は逃げないで全力でやらせてもらう。読者の皆さん、不快な思いをさせてごめんなさい。
 昨夜の雨もひどかった。馬場作りも、堆肥撒き作業も、しばらく出来そうにない。
 牛舎に向かうと、入り口に妊娠牛がいた(T_T)/~~~
 昨夜の雨で、電牧が効いていなかったのだろう。なぜかこゆきも混ざっており、電牧をなんとも思っていないこゆきが柵を破壊した後に、他の牛が続いたと思われる。全部で10頭!
 牛舎の中はメチャクチャに荒らされており、なぜか蕾次郎が部屋から飛びだして、こゆきの乳を吸っていた。あ”〜!また下痢するな〜!
 簡単に飛び出せる子牛部屋は、あまり誉められた物ではないのだが、『もし火事になった場合に、逃げられるから良いね。』と言われたこともある。喜んで良いのかな?
 脱柵牛をスタンチョンに繋いで、朝牛舎を終わらせる。あえて、電牧調教はしない。
 朝飯の後、牧柵の修理をする。電牧ケーブルはまだ入荷しないので、針金で代用した。バッチリ電圧がかかっているのを体感してから、妊娠牛を元の放牧地に引っ張っていく。9頭も引っ張るのは、疲れるのだ。
 足跡をたどって、となりに迷惑をかけていなかったか確かめる。幸い、途中で引き返していた。山奥で良かった。
 そもそも、こゆきが妊娠牛の放牧地に行くのが悪い。彼女がいつも飛び越している場所のバラ線を、支柱を足して、身軽な彼女でも飛び越せない高さに上げた。怒ったこゆきは、しばらく吠えていた。
 出荷予定の、鈴太郎(北平安)、多恵三郎(茂勝栄)、みちる(金安平)を、ブラッシングした。
 捨て子で凍死寸前だった鈴太郎も、今では立派な体格に成長した。どんなに大きくなっても、甘えん坊なのは変わらない。でも、もうちょっとでお別れだ。
 PGを注射したアヤが、ようやく発情した。