雪四郎旅立つ Happy Memorier

 変な夢を見た。
 海に素潜りするチャンスを与えられた。喜んで潜るのだが、なぜか目的地を設定された。不審に思いつつ承諾する。
 だが、思いの外遠く、何時間も暗い海を泳ぎ続け、やっとゴールに近づいたと思ったら、ルールを改正されてそれまでの努力は無駄になった。
 もがきながら目覚める。
 今日は、薬をもらいに行く日だ。急いで朝牛舎を終わらせる。朝飯を食べ、出かけようとしたら、犬達が来客を教えてくれた。
 すっかり忘れていたが、平準化事業受精協力で産まれた雪四郎を、送り出す日だった。約10ヶ月飼育したが、これから肥育をして、新しい種雄牛の能力を調べるのだ。
 よそ行きの服のまま、雪四郎を捕まえ、家畜運搬車に乗せる。

 到着が遅れたせいか、病院は大繁盛だった。
 今日は、犬のブラシや、スモークウッド等を買った。買い物は、あまり好きではないのだ。

 事件は、俺の留守中を狙って発生する。ちょっと休憩して牛舎に行ってみたら・・・荒らされていた。届けられたばかりのエサの袋は、無惨にも破られて運古をかけられていた。奮発して買ったビタミン強化飼料も、床にぶちまけられていた(T_T)/~~~
 しばらくして、犯人のモモカが帰ってきた。電牧調教したが、どれだけの効果があるだろうか?
 牛には、良かったことだけを覚えているヤツと、怖かったことや嫌なことだけを覚えている牛が居る。
 モモカは前者だ。Happy Memorier(幸せな記憶者・memorerの方が良いのかな?)って造語かな?牛舎に来て、美味しいエサをタップリ食べたことだけを覚えているので、何度でも牧柵を破ってやってくる。良い牛なんだけど・・・。
 俺もHappy Memorierになりたい。嫌な記憶だけを引きずって生きるなんて、勿体ない。嫌な出来事の中にも、良い思い出はある。電牧調教はゴメンだが・・・。