真夜中の出産 ロール運び

 ヒカリ(安平)が、今にも産まれそうな仕草をしながら、これまで産まなかった理由は、胎児が大きすぎたのだろう。腹の張りはそれほどでもなかったので、小さい子どもが入っていると思っていた。
 午前1時まで待っても1次破水しないので、しびれを切らして行ってみた。獣医さんの使う長手袋をはめて、洗った陰部に手を突っ込む。頭も足も、正常に来ている。ただでかいだけだ。産道にハンドパワーを送って拡張させた。
 来た来たっ!袋が出てきて、一気に一次破水。左足が見えるが、右足はなかなか出てこない。産科チェーンをかけられないのだ。一旦左足を押し戻し、右足を出させる。産科チェーンをかけて、全体重をかけて引っ張るが、なかなか出てこない。手が千切れそうだ!ヒカリも、必死にいきむ。最初から滑車を使うのは、ちょっと気が引ける。
 息むのに合わせて引っ張っていると、少しずつ頭が出てき始めた。頭が出ても、胴体もでかい!産まれた子牛は、すごく大きな雄だった。『光次郎』(第2平茂勝産子)。羊水を吐かせるために、逆さ釣りするのだが、持ち上げるのが大変だった。久しぶりの手応え。
 でかい子牛は、産道を通るのに苦労してくるので、ミルクを飲めるようになるのに時間がかかるようだ。敷きわらを足して、体を舐めさせるのは親に任せ、俺は牧草ロールを取りに行った。真夜中にって思うだろうが、アホだから仕方ない。
 帰ってきたら、頭を持ち上げていた。立てそうにはない。生菌製剤入り人工初乳を作り、哺乳瓶で飲ませた。飲み干しても、まだ欲しそうだった。高価な初乳をもう一袋溶かした。これも、ペロッと飲み干した。
 ヒカリは繋がないで自由に子牛の世話が出来るようにして、俺は家に帰る。午前3時だった。

起きたら、8時だった。子牛を入れる部屋が、足りなくなっているので、早急に対策が必要だ。でも、雨が降るというので、ロールも運ばなければならない。
 一番草の倉庫は、だいたい一杯になったので、二番草は馬房のある倉庫に入れている。
 ポパイは、日中の暑い時間は、馬房の中で過ごしている。気がつくと、足下に糞が落ちていない。自分が立つ位置と、糞をする場所を別けて使っているのだ。意外と綺麗好き!
 最近触っていないが、毛づやもピカピカして、体調も良さそうだ。
 雪の重みでフレームが曲がっているこの倉庫は、内側からロールで押して支えてやらないと、たちまちつぶれてしまうのだ。160cmのロールは、4段積みしても安定していて良かった。