娘の成長 角折れ

 昨日、娘が初めて、家のオマルでうんちをした。とても上手にできて、俺からも妻からもすごく褒められた。こんなことでも、娘の成長を感じられ、すごく嬉しい。
 
 大雨の予報が外れて、強烈な日差しが照りつける蒸し暑い日になった。昨夜のうちに、娘の作った『スーパーてるてる坊主』を窓の外を向けて吊したせいだろうか?

 昨日の昼寝のせいか、俺は5時頃から目が覚めてダラダラしていた。
 
 カスピ海ヨーグルトのせいで(?)、これまでなんの病気もせず順調に育ってきた幸三郎だったが、2日前、どこかに頭をぶつけたらしく角が折れ、曲がったままかろうじてくっついていた。とても痛いらしく、えさ箱にうまく顔を入れられず、腹がへっこんでしまった。
 心を鬼にして、とれかかった角をとってやることにした。
 俺は単なるサヤ抜けだと思っていたが、見てみると中の芯まで折れていた。角のサヤを抜き取った後、角の芯の部分もカッターで切り取った。止血のために角の根本をしばって、スタンチョンにつなぎ、エサと牧草を与えた。気持ちを少しでも落ち着かせるため、妻が糖蜜を薄めた液を哺乳瓶で飲ませた。もともと素直な牛なので、痛がりながらもちゃんとエサは食べていた。
 俺は返り血で真っ赤である。
 
 午後から、昨日やりそこなった電気牧柵の下草刈りをした。
 馬の放牧地に迷い込んでいた牛たちは、馬に追い返されたのか、自分たちの放牧地にもどっていた。
 ものすごい湿度の炎天下の中、牧柵ケーブルにからみついた下草を刈り取っていった。ついでなので、放牧地に生えているアザミやヨウシュウヤマゴボウなどの悪質な雑草も刈り取った。美しい馬に成長したビクターとジュリアが、作業している俺を見物しに来た。牛と馬をしきる牧柵ケーブルもしっかり立て直した。
 頑張ったごほうびに、たくさんのヤマブドウの実がついている場所を発見した。秋が楽しみだ。
 刈り払い機のガソリンがなくなるまでがんばったのだが、ちょっとやりすぎで、俺は軽い脱水症状に陥った。
 
 帰宅してみたら、もう保育所に娘を迎えに行く時間だ。
 俺が作業をしている間に、妻が迎えに行きそのまま牛舎で娘のおもりをしていた。妻がちょっと牛のエサなどに気をとられ目をはなしたスキに、牛舎の窓から顔をつっこんできた馬のマロンに、なんと娘がエサをやっていた。見ていると、小さな手でバケツからつかんだエサを、マロンの口の中までつっこんで、何度も何度も食べさせているのだ。俺も妻も、それを見て仰天した。我が家の馬は人を噛まないように教えてあるが、まさか1歳4ヶ月の赤ん坊の手からエサを食べるなんて事態は、想定していなかった。マロンは、娘の手を噛むことなく器用にエサをもらい、嬉しそうにしていた。
 娘はマロンの大きな顔が邪魔なときには、大きな声を出したり、手で押しのけたりして女王様のように振る舞っていた。怖いモノ知らずだ。夕べはゴロウに自分の食べ残したご飯を、少しずつ手で食べさせて、得意そうにしていた。
 世の中には、怖い動物がいることも教えなければならない日が来るだろう。