牛の大脱走 選挙に行く 洗濯機壊れる 

 妻の風邪が治らないのだが、朝牛舎は娘を家に置いてやることができた。意外とはかどらない。下利便子牛には、とても食味が悪いという獣医散という薬をえさに混ぜてやったら、全然気にしないで食べてくれた。
 瓜三郎は、夜一回哺乳に制限した。配合飼料も3kgほど食べているし、まもなく生後三ヶ月になるので、離乳しようと思っている。
 糞出しは、部屋の外までやったが、搬出までは元気が残らなかった。
 天気がいいので、いろいろやらなければならないと思うことは沢山あるのだが、考えただけで疲れてしまった。家に帰ったら、朝の薬を飲んでいないことが判明。調子悪いワケだ。
 
 昼寝をしている娘の脇で横になる。目を覚ました娘は、俺の体を使ってひとしきり遊んだ後に、昼飯を食べに行った。ラーメンおじやを、自分でスプーンを使って食べたそうだ。窓の外を見ると、採草地に黒い影が沢山動いていた。
「脱走だ!」
追い込み経路を考えると、一人で連れ帰るのは大変な困難が予想された。
そうだ!選挙に行こう!」
目の前の困難から逃げるのは、気持ちが弱いときの俺の癖だ。
 投票後、ドラッグストアーにおしめを買いに行く。
 
 帰宅して、牛の追い込み作戦をやろうと車で中山採草地に向かって行こうとしたら、農道のゲートに牛の姿が見えた。車を降りて確認してみたら、水位の高まった森の中のため池に妊娠牛が集まっていた。勝手に帰ってきたのだ。果報は寝て待てと言うやつだろうか?脱出経路をふさぎに行く。春に掘った大小のため池も、昨日の雨で水がなみなみと溜まっていた。
 
 出かける前に、俺の作業服と靴の中敷きを洗濯したのだが、その後義母が選択したところ、水が溜まらなくなってしまったという。2回ほど空洗濯をしてみたが、うまくいかないらしい。
「壊れた。価格ドットコムですぐに買おう!」
妻は言うが、値段は3万円弱から20万円くらいまである。今はいろいろ調べる元気がないのだが、夏なので洗濯物は沢山ある。
 この洗濯機も、結婚前から使っている年代物だが、今まで一度も壊れたことがない。排水弁に、乾草が詰まっている可能性が高いと思った俺は、その辺の洗濯物を入れて普通に洗濯したら、直っていた。めでたしめでたし。
 
 夜牛舎は、娘を背負って行った。暑いので、娘も辛そうだった。糞の搬出をするときは、おんぶ紐が締まって苦しいらしい。そんなときは、上にずり上がって落下しそうになりながら、左右から俺の顔を覗いて
「バ〜〜〜ッ」
とやって遊んでいた。頭を振りすぎて、鉄柱に頭をぶつけても平気である。
 
 義母の作ってくれた晩飯を食べ、シャワーを浴びた娘を寝かせつけるのは俺の仕事だ。可愛いので、この仕事はとても好きである。