実は強いゴロウ 合掌上げ大詰め 

 とても穏やかな天気で、絶好の作業日和だ。牛舎に行ったら、アカリとモミジが脱走して、アカリはマサコのオッパイにシャブリ着き、モミジは走り回って流し場に大きな運古をしていた。
 朝牛舎を奥様方に任せ、俺は合掌を上げる準備をした。真っ二つに分裂した合掌を、添え木をして合体させた。強度的に不安なところは、両側から板で挟んだりした。もう一つの合掌は、壊れた2つの合掌を合体させて作った。あとの二つは新造したものだ。
 後にふるい牛舎が迫ってくるので、あまりバックできず、窮屈な体制で合掌を上げるのは苦労した。今日の助っ人は一人なので、1枚上げるごとにしっかり仮留めしないと(昨日は俺が手で押さえて次を上げていた)、不安定でしょうがない。それでも、3枚上げることが出来た。
「筋交いがこれだけ入っていると、揺れないね!」
今度は落とすわけにはいかないのだ!明日最後の1枚を上げたら、縦横斜めに繋ぎを取り、柱に対しても合掌から太い筋交いをたくさん入れて、強くするつもりだ。
 牛舎にキツネが入り込んだのを、ゴロウが通路の角に追い込み、捕まえてしまった。流血するほどには噛まないのだが、他の犬とのケンカと違いかなり本気だった。
「ゴロウ。頑張れ!」
と声をかけた途端、キツネの背骨を噛んで、気絶させてしまった。ネズミを捕まえるときも、血を流すほどには噛んだりしない優しいゴロウだが、「やるときにはやるなー」と感心してしまった。キツネが牛舎に入り込まなければいいので、そこで中断させてキツネを窓の外に出し、ゴロウを誉めてやった。以前は、追いかけて押さえ込むのだが、唸られるとそれ以上は何もできなくて、そのまま逃がしていたのだ。
 キツネは、牛舎内にフンをしたり、ニワトリを捕ったり、トウキビを食い荒らしたりするが、果樹園を荒らすウサギを食べてくれるので、あまり邪険にも出来ないのだ。