今日は、Yumiの誕生日であり、東京を引き払って移住してくる日だった。俺としては、魚を突いてご馳走したいところだ。昨日見た感じでは、波はだいぶ落ち着いてきていたが、平瀬の岩には、白波が立っているのが見えていた。今日は、それよりマシだろう。そんな甘い見通しを立てて、早朝から牛舎作業をして、9時には軽トラにカヌーを積み込んで出かけた。
 出発地の坂本温泉にも、波が入っていた。行けないことは無い波だったが、平瀬に上陸できるだろうかという不安があった。
 
 漕ぎ出してみると、うねりがあってちょっと気持ち悪かった。カヌーに乗るとき、俺は一番後ろの席で、漕ぐことと方向を決めることをし続け、前に乗った一人は、ひたすら漕ぐことになっている。
 最初は、K君が漕いだのだが、真ん中に乗っているY君はジッとして乗っていることが苦手らしく、左右に身体をゆすり出す。簡単にひっくり返るカヌーでは無いけど、足がかりの無い所でひっくり返った場合、このカヌーを起こすのは容易なことでは無いので、厳しく止めるように言うのだけど、数分後にはまた揺らし始める(^_^;) 
「揺らすな!」
 漕ぎ手になったら落ち着くかと思って、交代させてみた。しばらくは、元気に漕いでいたのだけど、数分後には手が止まってしまう。彼は、話をして誤魔化しているつもりらしいが、ずっっっと漕いでいる俺にとっては、休まれると漕ぐ手にかかる力が倍増するから、すぐに判るのだ。
「休まないで漕げ!」
 
 50分もかかって平瀬に着いた。平瀬周辺の潮流を調べ、上陸ポイントを決めた。上陸したけど、潮位も高く岩の上にカヌーを置いても、あまり安心できなかった。
 俺は、この程度の波の中で潜ることは少なくないのだけど、初心者の二人にはかなり厳しそうに見えた。足下の視界がシャンパンシャワーで遮られていたら、二人を連れてすぐに帰ろうと思っていたけど、思いの外透明度が高く、潮流もたいしたこと無かったので、ちょっとだけ潜ってみた。いつも入る場所にはアカジョウがいなかったので、いつもは行かない場所に潜って、大きなアカジョウを発見した。かなり深い! 一度浮上して、息を整えてから、俺の潜水限界深度の岩陰に隠れたアカジョウに、渾身の一撃を・・・。
 銛先は身体を貫通して、がっちり反しになり、マグロ用のラインで繋がれていた。俺は、息の限界だったので、必死に浮上を開始した。銛を置いて浮上した方が、魚の抵抗が無くて楽なのだけど、持ったまま強引に浮上したら、岩で擦れていたのだろうか? なんと、ラインが切れてしまって、アカジョウはフラフラと泳ぎ去ってしまった(T_T)/~~~
 
 悔やんでもしかたない。すぐに帰る事にした。ところが、波が高くなったような・・・? 高波の中で、岩の上からカヌーを漕ぎ出すのは、至難の業だ! 早速転覆して、Y君に貸したパラライザー銛を流失! ひっくり返すのも一苦労。 別な場所から出航しようとして、もう一度転覆(^_^;) 4mの銛の、中間軸を流失。 
 なんとか出航したら、あとは時間との闘いだった。フェリーの入港時間が迫っているのに、船足がなかなか伸びないのだ。コンディションが良いと、30分から40分で漕げるのに、50分経っても到着しない!
「真面目に漕いでくれる?」
 俺だけが一生懸命漕いでも、男三人乗ったカヌーは、重いのだ! 潮流をさかのぼることが難しい。
 カヌーが坂本温泉に着いた頃、Yumiが乗ったフェリーは、港に着いていた。MM嬢との会話。
M「ヨネさんは、向かえに来ないの?」
Y「海、行ってんじゃないの?」
M「Yは?」
Y「海、行ってんじゃないの?」
M「Kは?」
Y「海、行ってんじゃないの?」
M「使えねぇ〜!」
 面目ない! 
 
 午後から種蒔きの準備をして、早めに上がって宴会の準備をした。
 Yumiの誕生会には、テレビカメラも入って、ちょっと緊張しながらも、楽しく飲み食いできた。