木彫りのカヌー


 鹿児島に帰ってきた。
 汽車旅行では、読書が進のだ。もちろん、車窓からの景色も見るのだが、ページもどんどん進み、3冊目に入ってしまった。3冊目は、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』だ。詩人の文章は、美しすぎて俺の頭には入りにくく、すぐ眠ってしまうのだ。
 100年物の杉の木をくり抜いて造った外洋カヌーで、韓国に行ったり硫黄島に来たりする人が、鹿児島市で居酒屋をしている。なぜか、俺はそこに招待されていた。
 電車に乗って、のこのこ出かけた。
 初対面なのに、美味しい食べ物とビールや焼酎を出していただいた。飲みながら、いろいろ話が弾んだのだ。