八雲にて


 早寝したので、明るくなる前に目が覚めた。朝のゆっくりした時間を楽しむ。
 今日は、八雲の病院に行く日だったので、早めに朝牛舎をする。獣医さんも、早い時間に来てくださった。いつも思うのだが、体温計って壊れなければいつまでも使えるのに、一つ壊すと立て続けに壊れる。これまで長生きした体温計が、なぜか壊れていた。新しく出して、真由次郎の体温を計っていたら、秋四郎がやってきて、クリップを加えて放り投げ・・・。こんなことって、あんまりないよね?
 親から放して断乳していたマリヨだが、親に着けたらたちまち下痢をした。乳質改善が進んでいないらしい。人工哺乳でないと、こんなところで苦労する。
 病院の駐車場は空いていたが、俺のかかる科はすごく混んでいた。車の荷台に座り、ゴロウとカイトの側で、本を読んで時間を潰す。大人しい犬達と判ると、いろいろな人に声をかけられる。順番が近づいて、診察室前で待っていたとき、救急車のサイレンに反応した彼らは、大合唱を始めた。おもしろそうに聞いている人も多かったが、犬嫌いの人には耳障りなので、急いで駆けつけ、『シ〜〜〜ッ!』ッと黙るように促す。良い子なのですぐに黙る。見ていた人は、とても感心してくれた。
 帰りに、遊楽部川の立ち寄る。たぶん、カラフトマスの群が遡上していた。雄同士の闘いも見られた。川に飛び込んだゴロウだったが、大きなさかなに驚いて、飛びだしていた。メスで捕まえて持て来ないかと期待したが、平和主義者のゴロウは、そんなことはしなかった。